コメモ。

日記。メモ。備忘録。

パナソニックの新型カメラ「GX7 MK2」開発の裏事情

Panasonic ミラーレス一眼カメラ ルミックス GX7MK2 ボディ ブラック DMC-GX7MK2-K

パナソニックが5月18日に発売するミラーレス一眼「GX7 MK2」の背景にある事情がちょっと面白いので書き残しておこうと思います。

何が面白いのかというと、その名前

「GX7 MK2」

MK2は「Mark2」のこと。マーク2、つまり「GX7」の2世代目ということになります。

カメラの新モデルにマーク○(数字)がつくパターンは別に珍しいことではなく、キヤノンやオリンパス、ソニーなどで普通に使われているネーミングです。

しかし、パナソニックが「マーク○」を使うのは、実は今回が初めて

そしてここが、僕が面白いなと思った部分でもあります。

何を言っているのか、まだいまいちわからないと思うので、解説します。

まずはパナソニックのミラーレス一眼ブランド「LUMIX」のシリーズ構成を紹介しましょう。

他のカメラメーカー同様、パナソニックの「LUMIX」にもいくつかの機種がラインナップされており、価格や機能でヒエラルキーが存在します。

第一に、LUMIXの頂点である「GH」シリーズ。

静止画よりもむしろ動画機能の高性能さで知られるシリーズです。現在の最新モデルは「GH4」。映像系のプロも当たり前のように使っており、4K動画をはじめとする高画質な動画機能がこれでもかとつめこまれています。まさにプロフェッショナル機と呼ぶにふさわしいフラグシップモデルです。

そして「GX」シリーズ。

GHシリーズに続いてLUMIXでは2番手に位置づけられる高機能モデルです。現在の最新モデルは「GX8」。このGXシリーズが今回の話のメインとなります。

続いてミラーレス一眼の始祖ともいえる「G」シリーズ。

性能も外観も「GH」シリーズに似ていて、リトルGHとも呼べるバランスのいいモデル。現在は3代目である「G7」がラインナップされていて、性能を考えるとありえない低価格で販売されています。コストパフォーマンスでは全カメラメーカーを入れてもNo.1でしょう。

そして小型モデルの「GF」シリーズ。

こちらは過去にレビューしたのでご覧いただきたいのですが、女性をターゲットにした小型軽量のエントリーモデルとなっています。最新モデルは「GF7」で、やはり価格的にとてもお買い得です。

cafewriter.hatenablog.com

最後に超小型「GM」シリーズ。

小型なので最後に紹介しましたが、造りの良さや定価を考えるとエントリーモデルと呼んでいいかは微妙なところ。現在、生産が終了しており後継機の発表が待たれます。

……といったところで、LUMIXのカメラを紹介してきましたが、何となく気付きましたか?

そう、LUMIXのカメラは、すべて「シリーズ名+数字」というネーミングルールに則って名前がつけられているんですね。

「GH4」とか「G7」とか「GF7」とか。

ところが、「GX」シリーズだけは「GX7MK2」なのです。

なぜか。

実は「GX」シリーズの最新モデルに「GX8」というカメラが存在します。

このカメラは昨年発売されたもので、2013年発売の「GX7」の後継機としての位置づけでした。

Panasonic ミラーレス一眼カメラ ルミックス GX8 ボディ 2030万画素 ブラック DMC-GX8-K

銘機として人気のあったGX7から3年。GX7ユーザーはGX8を楽しみに待っていたのです。

ところが、満を持して登場したGX8に、GX7ユーザーの多くから不満の声が上がりました。

原因はボディの大きさです。

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Camera size

左がGX7、右がGX8です。ご覧の通りGX8の方がかなり大きくなっています。

もちろん、ただ大きくなったわけではなくて、その分いろいろな機能がアップしました。ファインダーは大きく見やすくなり、手ぶれ補正も強力になり、グリップも大きくしっかりしたものになり、大きめの望遠レンズをつけても違和感はありません。パナソニック開発陣はGX8のコンセプトについてインタビューで次のように語っています。

従来のGX7も、サイズ感やデザイン、ファインダーのチルト機構など高い評価をいただきましたが、他社のフラッグシップと比較すると、操作感やグリップ感にもの足りなさを感じる方もいらっしゃいました。そこで、ストリートフォトのフラッグシップとして、従来のGX7よりも1段上の風格や操作性を追求したのがGX8です。

つまり、GHよりも一つ下のモデルだったGXシリーズを格上げし、「ダブルフラグシップ体制」にしたというのです。

これを望んでいたユーザーもいたでしょう。

しかし、従来のGX7の「機能と大きさのバランスのちょうどよさ」が好きだったユーザーは、明らかにオーバースペックなGX8に戸惑いました

GHシリーズとGX8は大きすぎる。GシリーズはリトルGHなのでやはり大きめだし、さりとてGFやGMシリーズになると今度は機能面で不満がある……。

コンパクトな大きさに多機能をギュッと凝縮したGX7が好きだったユーザーは、宙ぶらりんの状態に追い込まれたのです。

こうした声はパナソニックにも届いていたと思われます。

良くも悪くもユーザーの声に敏感に反応するのが日本のメーカーの性。

ユーザーが小さいGXシリーズを望んでいるなら、応えなければならない。

しかし、困ったことに、すでにGX7の後継機としてはGX8が存在します。

GシリーズもG7を出したばかりだし、GFやGMシリーズにもそれぞれファンがいるので、GX7の役割を担わせるわけにはいかない。

じゃあどうする?

……そうやって逡巡した末にパナソニックが出した答え。

それが「GX7 MK2」だったのではないかと思うのです。

つまり、GX7の正当な後継機はマーク2ですよ、と。

GX8は機能的にも大きさ的にもGX7とは別物なので、GX7の後継機はちゃんと用意しましたよ、と。

一応筋は通っている気はしますが、ネーミングにはどうしても行き当たりばったり感が漂ってしまっています。

だって、シリーズ名は「GX」だったはずでしょう? なのに「GX7 MK2」って、それもう「GX7」がシリーズ名になってるじゃん!

そんなツッコミを入れたユーザーは僕だけではないはず。

でもまぁ、そういうところも含め、真面目に製品を作ってくるパナソニックとLUMIXが好きなんですけどね。

もっとLUMIX売れないかなぁ。本当にいいカメラを作るメーカーなんですけどね。

カシオって不思議なメーカーだよな

カシオって不思議なメーカーだよな、と思う。

いろいろな事業をやっていて、そのどれもちゃんとしているんだけど、不思議とその業界に染まっていないというか、何か他のメーカーとは壁一枚隔てたところにいるような印象がある。

たとえば僕にとってカシオはデジカメメーカーなんだけど、ニコンやキヤノン、ソニーやオリンパスなんかに比べると、いわゆるデジカメオタクからは圧倒的にスルーされているのね、カシオって。世界で初めてデジタルカメラを作ったメーカーなのにね。

コンデジばかりでレンズ交換式デジカメを作っていないからデジカメオタクからは軽く見られているのかもしれないけど、それだけでもない気がする。カメラ専業メーカーじゃないってこともあるかもしれないけど、それを言い出したらキヤノンもオリンパスもソニーも専業ではないし。

別にカシオはテキトーにデジカメ事業をやっているわけではない。きっちり利益も出しているっぽいし、BCNランキングでも2年連続でちゃっかり3位に入ってる。

右肩下がりが続くカメラ市場において利益を出している立派なカメラメーカーのはずなんだけど、なぜかカシオって他のメーカーとちょっと立ち位置が違うんだよなぁ。ニコンとかキヤノンとかソニーとかオリンパスとかリコーとか富士フイルムとかパナソニックが同じ大陸で戦争しているとしたら、カシオは近くの島国からのんびり眺めてるって感じ。同じように感じている人、いるんじゃないだろうか。

で、カシオはGショックでおなじみの腕時計メーカーでもあるわけだけど、これまた独自の立ち位置を築いている印象。セイコーとかシチズンとかロレックスとかオメガとかとはちょっと違った土俵という感じ。Gショックみたいなタフネス系の腕時計だからジャンルが違うだろうって? それはそうなんだけど、じゃあ仮にカシオがロレックスみたいな機械式腕時計を作り始めたとして、同じ土俵で比較されるのかというと……なんかちょっと違う気がするんだよね。ロレックスとセイコーで迷うことはあっても、ロレックスとカシオで迷うことはないというか、何となくそういう感じ。

あと、電子楽器も作ってたっけ。

ぜんぜん知らない分野だから、ここは言及しないけど、どうなんですかね。楽器メーカーとしてのカシオは、他のメーカーと同じ土俵で戦ってるんでしょうか、楽器ファンの皆さん。

いろいろな事業をやっていて、どれもちゃんとやっているんだけど、なぜかその業界の戦いからは一歩引いたところで独自の立ち位置を築いているような、そんな感じ。特に根拠はなくてぜんぶ印象ではあるけど。

カシオってホント、不思議なメーカーだよな。

何となくいい感じに桜を撮る3つの小技

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今さらかよという感じですが、まだ桜は散ってないし、今週末がお花見という人もいると思うので、何となくいい感じに桜を撮る小技を3つほど紹介しておきます。スマホでは難しいものもありますが、本格的な一眼レフとかじゃなくてもぜんぜんOKです。

といっても大したテクニックではないのですが、

  • 晴れなら空を入れる。曇りなら空を入れない

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これは昨年撮ったやつなんですが、晴れているときは積極的に青空を桜のバックに入れていくと綺麗です。

でもお花見の日が晴れているとは限らなくて、どんより曇っている日もありますよね。曇り空と桜の組み合わせは撮り方にもよりますが、あまり相性はよろしくないです。曇り空をバックにしてもいい感じに撮れるセンスの塊みたいな人はそれでいいのですが、普通は難しい。

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そういうときはもう、空を入れない方がいいです。難しい課題からは逃げるのが正解。

  • オートでカメラが決めた明るさよりも明るくする

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この写真ばっかりですが、今年まだこれしか撮ってないんですよね。仕事のついでにふらっと撮ったやつなんですが。

で、これは明るさをカメラ任せにして撮っています。夜桜とかは別にして、桜を大きく撮ろうとすると、たいていこういう明るさになります。

ちょっと暗いですよね。なぜこうなるかというと、桜はたいてい白くて明るいので、カメラが勝手に「明るすぎるやろ」と判断し、全体の明るさを下げるんですね。カメラにはそれが桜かどうかはわかりませんから。

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なので、カメラが出してきた明るさを自分で上げてやると、白くて綺麗な桜になります。ちょっとだけ上げてもわかりにくいので、0.7〜1.0くらい上げてやるといいと思います。

  • 遠くから思い切りズームして撮る

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桜って近寄って撮ろうとすると、わりとスッカスカだったりして、花で埋もれる感じのボリューム感が出にくいです。

そういうときは離れたところから思い切りズームして撮ると、桜がギュッと詰まって撮れるのでボリュームが出ます。専門用語でいう圧縮効果というやつです。

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スマホでは無理ですが、ズームレンズつきのカメラを持っていたらぜひ試してみてください。

以上、

  • 晴れなら空を入れる。曇りなら空を入れない
  • オートでカメラが決めた明るさよりも明るくする
  • 遠くから思い切りズームして撮る

何となくいい感じに桜を撮る小技でした。

今ほしいガチ撮影用のカメラバッグ - 大きさ・重量・収納力で選ぶ

カメラ沼には何種類かあって、有名なのはレンズ沼ですが、僕が今つかりかけているのはバッグ沼です。

もう何種類も持っているんだけど、撮影スタイルが変われば適切なバッグも変わり、マジで終わりがない無限地獄。

理想的なバッグが一つあればいいなんていうのは沼の中の蛙、大海を知らずですよ。

そんなわけで今探しているのは、ガチの撮影用に使えるカメラバッグ。

最近はおかげさまで撮影仕事も増えてきて、出張なんかもちょくちょくあり、そのためのバッグを探しているわけです。

現在はロープロのプロローラーX200を使っているのですが、このサイズだと飛行機の手荷物にならないことがあるし、気軽に運ぶのにはちょっと辛い。機材的にもうちょっと少なくてもいいだろってこともあります。

入れたい機材をまとめると、

フルサイズ一眼レフボディ2台
大三元2本(標準・望遠)
広角ズームレンズ
マクロ
単焦点1~2本
ストロボ1~2個
MacBook
その他小物

これでおそらく最大。

ライトは別のバッグで持ち運ぶとして、とりあえず上記が入るバッグで、機内持ち込みできるくらいコンパクトで、電車移動もしやすいショルダータイプのものがほしい。

いろいろ検討した結果、候補にした製品は3つ。

ロープロのステルスリポーターD550AW。

外寸は横幅410×奥行280×高さ300mm。重量2410g。

なんといっても安い! PCの収納スペースがあって、収納力も抜群。小型機でもギリギリ手荷物にできる。見た目はあまり好きじゃない。

サイズのわりに重すぎるかなー。

ARTISAN&ARTIST アルティザン&アーティスト カメラバッグ ブラック GDR-213C-BLK

ARTISAN&ARTIST アルティザン&アーティスト カメラバッグ ブラック GDR-213C-BLK

登山と写真で仕事をしている人。で紹介されていたアルティザン&アーティスト GDR-213C。

この手のカメラバッグにしてはデザインがいい。ボディ2台と大三元とストロボ収納可能ということで、最低限仕事ができるだけの機材は入りそう。紹介していたブロガーさんもブライダルで使っていたと書いていたので、それなりに収納力はあるんだと思う。

外寸は横幅350×奥行き300×高さ200mm。重量は1550gととてもコンパクト。気になるのはノートPCが入らなそうってこと。

tamrac ショルダーバッグ 10L グレー 610-30

tamrac ショルダーバッグ 10L グレー 610-30

タムラック610。

知り合いが使っているのを見て、これはいい! と思ったやつ。

外寸は横幅510×奥行250×高さ260mmと、けっこうな大きさ。重量は1871g。小物を収納できそうなスペースがたくさんあって便利そう。見た目は捨てました。

レンズは問題なく全部入りそうだけど、ノートPC入るスペース作れるかな、これ。

あと、サイズ感が100cmをほんの少し超えるので飛行機内持ち込みがちょっと不安。


……という感じで、機材とPCがが入るならという条件付きでアルティザン&アーティスト GDR-213Cが第一候補。コンパクトだし軽いし見た目もいい。

でも機材が厳しいようであればロープロのステルスリポーターD550AWかタムラック610になる。前者はPC収納できて大きさも外寸合計100cmに収まるけど、2.4kgもあるのは何で? という感じ。

後者は大きさのわりには軽くて収納力は抜群だけど、100cm超えるのとPC入るスペースがあるかわからない。

どれも一長一短なので、もうちょっと悩みそうですが、ブックマークもかねて記事にしておきます。

レンズ沼宣言

お前にレンズを勧める前に言っておきたい事がある
かなりきびしい話もするが 俺の本音を聴いておけ

Lを先に買ってはいけない
Nを先に買ってもいけない
キットズームはうまく使え いつもきれいに撮れ
出来る範囲で かまわないから

忘れてくれるな 1.4も買えない奴に
レンズを語る 資格などないってことを
1.2や0.95にしか 撮れない写真もあるから
それ以外は貯金もせず だまって★を買ってこい

お前のツァイスと俺のライカと どちらも高価だ大切にしろ
単焦点 MF かしこくこなせ
たやすいはずだ 愛すればいい

マウントの陰口言うな聞くな
それからつまらぬシットはするな

俺はマウント追加はしない たぶんしないと思う
しないんじゃないかな
ま、ちょっとは覚悟しておけ

防湿庫(しあわせ)は二人で 育てるもので
どちらかが苦労して
つくろうものではないはず

お前はレンズ沼へ 金を捨てて来るのだから
帰る場所はないと思え
これから沼がお前の家

レンズが古びて写りが落ちたら
それを理由に売ってはいけない

売ってもわずかな額にしかならぬ
それを理由に捨ててもいけない

何もいらない財布を握り
ショップの価格ふたつ以上くらべろ
お前のお陰で 安く買えたと
あとで言うから 必ず言うから

忘れてくれるな 俺の愛するレンズは
愛するレンズは 買ったものすべて

忘れてくれるな 俺の愛するレンズは
愛するレンズは 手に入れたものすべて

「LUMIX DMC-TX1」VS「STYLUS 1s」 - 取材用ベストコンデジを探す旅

取材では対象やカバンの大きさに応じて複数のカメラを使い分けています。

中でも最小のカメラとして愛用しているのがオリンパス「STYLUS 1」で、以前にレビューした通り、かなり気に入っています。

cafewriter.hatenablog.com
※実際持っているのは前モデルのSTYLUS 1ですが、性能はSTYLUS 1sとほぼ同じです。

取材用としてはかなり完璧に近いコンデジですが、不満がないわけではなくて、あとちょっとがんばってほしいところもあります。

  • 広角が24mmになってほしい
  • もう少しだけコンパクトだと嬉しい
  • USB充電できると嬉しい
  • 動画の性能が上がると嬉しい

要望としてはこんな感じ。まぁなくても十分なんですけどね。

で、後継機の噂もなく、このままSTYLUS 1sは消滅するのかなぁと思っていたら、パナソニックから出ましたよ!

これ。LUMIX DMC-TX1です。

1型センサーと25-250mmのレンズを搭載しながら薄型のコンパクトボディを実現していて、STYLUS 1sよりもコンパクトボディ。しかもUSB充電も可能。動画も申し分なし。

なんと、STYLUS 1sに感じていた不満をほぼ解消してきたのです!

しかし、気になるところもあります。

まずレンズのF値が2.8-5.9と暗いこと。STYLUS 1sは通し2.8なので、暗所の望遠側ではかなりの差が出ます。

TX1は1/1.7型のSTYLUS 1sよりもセンサーサイズが大きいので、これを高感度性能でカバーすることになるわけですが、2段分もの差を果たして解消できるのかどうか。何しろ、STYLUS 1sがISO1600のとき、TX1はISO6400ですからね……。何となくですが、1型センサーと1/1.7型センサーの高感度性能差は1段くらいかなと思っているので、そうなると暗所望遠でTX1は不利ということになります。

それから最大の差は価格。

発売したてのTX1は8万円くらいしますが、STYLUS 1sは価格がこなれまくっていて、4万円くらいです。なんと半額! 僕は買い替えなのであまり関係ないですが、これからどちらかを買う人には大きな違いですよね。

ただ、それ以外はさすがにTX1の方が上なので、迷うんですよね。

取材カメラとして重要な性能をちょっと比較してみると、

TX1 STYLUS 1s
画素数 2010万画素 1200万画素
センサー 1型 1/1.7型
レンズ(35mm換算) 25〜250mm F2.8 - 5.9 28~300mm F2.8
マクロ 5cm(W端)/70cm(T端) 5cm~60cm(ズーム位置換算約42mmに固定)
サイズ 110.5 x 64.5 x 44.3mm(突起部を除く) 116.2×87×56.5mm(突起部を除く)
重量 約310g 約402g
バッテリー 約300枚 約450枚
USB充電 対応 非対応
動画 フルHD 60p:1920x1080(約28Mbps)&4K動画 フルHD 30p:1920×1080(29.97fps)20Mbps
可動液晶 なし 上下チルト

……ね、一長一短なんですよね。

やはり新しい分、TX1はスペックが高いですし、明るい場所での画質はおそらくSTYLUS 1sより上でしょうね。

しかし取材ではかなり暗いのにストロボが使えないときも多いので、ISO感度が上がらないようレンズの明るさはけっこう重要なのです。

バッテリーはSTYLUS 1sの方がもつのですが、TX1も少なくはないですし、USB充電に対応しているので、モバイルバッテリーを持ち歩くならむしろTX1の方がもつでしょう。

何よりこのコンパクトさ、特に薄さは魅力的です。STYLUS 1sはとてもポケットに入る大きさではないですが、TX1ならギリギリ入るかもしれません。取材では一定の画質を保った上でなるべくコンパクト&軽量な方がいいので、薄いレンズの恩恵はかなり大きいです。

しかし、暗い。

取材ではF5.6だとISO6400になるくらいしか光のない場所もざらなので、F5.9はなかなか冒険です。

かといってズーム倍率を減らして別のカメラを選ぶわけにもいきません。10倍ズームはこの仕事ではほぼ必須です。

うーん。難しい。

現状だと僕はすでにSTYLUS 1sを使っていることもあり、買い換えるまではいかないのですが、今から選ぶならこの差額分をどう考えるかですね。

ちなみにSTYLUS 1sは生産終了という情報もあるので、ますます迷うところです。

囲碁のプロ棋士を破ったAIは、デジカメの世界も変えるかもしれない。

ついに囲碁のトッププロがAIに敗れたということで話題になっているようです。

これを書いている時点でプロ棋士のイ・セドルが2敗しており、このままいくと全敗も大いにありうるようです。

どんな対局が繰り広げられたのかという経緯はあんちべ!さんが丁寧に解説されているので、そちらをご覧いただくと早いです。

antibayesian.hateblo.jp

コンピュータが人間を負かした技術については深いことはわかりませんが、どうやらディープラーニングとセルフ学習で飛躍的に強くなったとか。ディープラーニングでは、インターネットの囲碁対局サービスの棋譜(対局の手順を記した記録)をコンピュータに読み込ませて自動学習させたそうです。

囲碁は将棋やチェスに比べるとふんわりした部分が多く、特に序盤は計算だけではなかなか正解が導き出せません。そこがコンピュータにとって壁となっていた部分なのですが、今回ディープラーニングにより、ありとあらゆるパターンの対局をコンピュータが学習したことで、その「ふんわり」した部分すらも計算が可能になったということなのでしょうか。

そんな囲碁の話はさておき、僕がこの話で思ったのは、このディープラーニングの技術はIoTと組み合わされて、そのうちデジカメの世界にも波及するんじゃないかということです。

どういうことかというと、デジカメの「オート」モードで失敗が限りなくゼロになる時代が近いうちにくるのではないかと思うのです。

ご存じの方も多いですが、デジカメのオートは決して万能ではありません。一昔前とくらべるとだいぶ賢くなりましたが、まだ失敗も多いです。変に明るくなってしまったり、逆に暗くなりすぎたり、ブレたり、ピントが思わぬところにいったり、勝手にストロボを炊こうとしたり……。

これはデジカメのオートのアルゴリズムに限界があるからだと思うのです。

たとえば、黒い服を着た人を画面いっぱいに撮ろうとすると、オートだと画面がものすごく明るくなります。これはなぜかというと、「暗い部分が多いから、全体を明るくすればちょうどよくなるだろう」とデジカメ側が判断するからなのですね。逆に太陽が差し込む窓をバックに人を撮ろうとすると、今度は窓の向こうが明るいため、「白飛びはいかんだろう」とデジカメが判断。そちらに明るさを合わせた結果、部屋の中が暗くなりすぎて肝心の人の顔が真っ暗になったりします。これが「逆光だと人が暗くなってしまう」理由です。

窓の外の景色は白飛びしてもいいから人の顔に合わせて露出を決定してほしいことは多いですし、顔認識機能が発達してからそのへんはかなり正確になってきたのですが、まだまだ完璧ではありません。

と、こんなふうにまったくもって万能ではない現状のオートモードですが、前述のディープラーニングとIoTが普及すれば、飛躍的に改善できるのではないかと期待しています。つまり、デジカメがネットワークを通じてあらかじめディープラーニングした「膨大な量の綺麗な写真」を参考に、最適な露出やホワイトバランスなどを自動設定してくれるのです。「画面が暗いっぽいから露出を上げよう」のようなざっくりした判断ではなく、今撮ろうとしている写真に近い「成功例」を世界中の写真から探しだし、構図や光の具合などを判断するのです。

これなら、ほぼ確実に失敗のない写真をオートで撮れるのではないでしょうか。「そんなの余計なお世話だよ、どう撮るかは自分で決めるよ」という人は、オートを使わなければいいだけです。

もし、こうした技術が可能になるとすれば、それはまずスマホに搭載されるかもしれません。スマホはすでにネットワークに常時接続されていますし、オートを使うユーザーが多いので、恩恵は大きいはずです。

囲碁やデジカメだけではなく、「学習することで最適解を導き出す」ディープラーニングがあらゆる業界に革新をもたらす気がしてなりません。