コメモ。

日記。メモ。備忘録。

記者は取材で撮影する場合、どんな設定で撮っているのか。

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身も蓋もないことをいきなり書きますが、「これで撮ればいつでもオールOK」という設定は存在しません。

ですが、いくつかポイントを覚えておけば、あとはそれらを使い分けることで対応することができます。日常的な撮影にも応用できると思いますので、参考になれば幸いです。

 

フォーカスモードの基本設定

基本は「中央1点」です。

絶対に大切なのは「撮れていること」です。スタジオでがっつりライティングを組んで撮影できるならいいのですが、取材では「今目の前で起きたこと」を確実におさえた写真が求められますので、とにかくシャッターチャンスを見逃さず撮ることが何よりも大切になります。きれいな写真を撮るために決定的な1枚を逃すくらいなら、ノイズだらけでも撮れている方が100倍マシです。

それを前提として、次に大切なのは「ピントが合っていること」です。最近のデジカメはRAWでさえ撮っていれば、露出で失敗しても後からリカバリできます。しかし、ピントだけはどうにもなりません……。

よって、フォーカスは「中央1点」に設定し、フォーカスロックして構図を決めるのが基本となります。コサイン誤差が気になる人もいるかもしれませんが、取材ではF2.8よりも開放はめったに使わないので、さほど気にしなくても大丈夫です。稀にインタビューカットで背景がうるさい場合は単焦点開放で整理しますが、その場合はきちんとフォーカスポイントを動かします。だいたいの状況はこれで何とかなります。

ただし例外もあって、それはインタビュー中の撮影や、トークイベントで被写体がカメラを意識せず自由に動いているときです。

このとき、被写体の動きがある程度速い場合は、動体に追従する「AF-C」(ニコンの場合)に設定して顔を追いかけます。自分はダイナミック9点をよく使います。または絞りである程度被写界深度を深くとり、ピントのズレを防ぎます。

……あ、スポーツや舞台を撮る場合は「AF-C」の方が基本になりますのでご注意ください。あと、あまりないのですが、動体だと置きピンで撮ることもあります。

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撮影モード

基本は「A」(絞り優先オート)です。

なぜかというと、取材の写真で大事なのは「写真の意図」だからです。被写体と背景を一緒に撮って状況をわかりやすく伝えるのか、逆に背景をボカして被写体だけにフォーカスするのか。必要な情報が過不足なく写っていることが大切なので、取材ではF値のコントロールは必須となります。マニュアルでもいいのですが、その場合はISOオートを主に使います。ISO感度も含め、すべて手動で設定するのは、かなり余裕があるときです。

シャッタースピード優先オートはあまり使いませんが、動体を撮る場合や、プロジェクタを撮影するときのフリッカー現象を防ぐのに使います。フリッカー現象の詳細は割愛しますが、プロジェクタを撮影して虹みたいな線が入るという人は、シャッタースピードを1/30くらいに設定して撮ってみてください。ちゃんと撮れるはずです。

頻度としては「絞り優先オート」→「マニュアル露出」→「シャッタースピード優先オート」という感じです。

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ホワイトバランス

基本はオートです。

ただし、状況次第で調整します。たとえば屋内の記者会見などではタングステン光が多く、そのままオートで撮るとかなりオレンジがかります。それがわかっている場合はプリセットホワイトバランスで適切なものを選ぶか、あるいは手動でケルビンを入力します。似たような現場を何度か取材すると、だいたいの数値がわかってくるので、今は直接設定することが多いです。

大きな会見などでは、始まる前にマニュアルでホワイトをとれることが多いので、そちらで設定することも多いです。撮影中に何度か照明が変わる場合は、それぞれをカスタムホワイトバランスに登録しておくと便利です(記者会見ではフォトセッションで照明が変わることが多いです)。

ISO感度

基本はオートです。

マニュアルモードでシャッタースピードと絞りを設定し、ISOをオートにすると、意図通りの写真が撮れて失敗も少ないので便利です。

比較的光量のあるところでは、ISO400にすることが多いです。最近のカメラは400くらいならまずノイズは気にしなくて大丈夫ですし、シャッタースピードがかなり稼げますので。もちろん、画質最優先で撮る場合は最低感度で撮影します。

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測光モード

基本はマルチパターン測光です。

メーカーによって呼び名は変わりますが、標準的な測光モードです。たまにスポット測光を使うこともありますが、仕事的に9割くらいはマルチパターン測光で問題ありません。どうしても難しい場合はマニュアル露出で対応します。

オートフォーカス

基本はオートフォーカスを使います。

ただし、金網越しに撮影しなければいけないときや、マクロレンズを使った物撮りなどではマニュアルフォーカスを使うこともあります。

オートブラケット

よほどのことがない限り使用しません。写真の枚数が増えすぎると整理するのも大変ですし、そこまで露出を決めるのに手こずる状況も少ないので……。ただ、黒っぽかったり白っぽかったりでオート露出が迷いそうな場合、かつ撮ってすぐ納品しないといけない場合には念のため0.7~1段くらいのブラケットで押さえておいた方が安心かも。

RAW

基本はRAW+JPG

ニュース性が強い記事ではだいたい撮って出しを使いますが、インタビューカットなどは後でしっかり調整します。どちらにしても、念のためにRAWで撮影しておき、仕事から一定期間過ぎたところでRAWだけ削除するケースが多いです。RAWは重いからね……(D800Eだと1枚40MBとかになる)。

 

以上、取材時における設定の話でした。撮影環境や被写体はその時々でまったく違うので、実際にはこれ以外にも色々なことを考えて撮らないといけないのですが、でもその考える作業が楽しいんですよね。うまく思った通りにハマったときは最高に気持ち良いです。もし「こういう設定の方がいいよ」というアドバイスなどあれば、よろしくお願いします。

さあ、明日の取材もがんばろうっと。