【レビュー】ニコン「AF-S NIKKOR 28-300mm f/3.5-5.6G ED VR」各焦点距離の描写をテストしてみた
今回レビューするのはニコンの高倍率ズームレンズ「AF-S NIKKOR 28-300mm f/3.5-5.6G ED VR」です。
2010年発売でフルサイズ対応。スペックのわりに800gと軽量ながら、一本で広角から望遠までカバーできる究極の便利ズームで、僕が仕事で一番お世話になっているレンズでもあります。
実際、取材の現場ではこのレンズを使っているカメラマンもかなり多いです。ライバルであるキヤノンにも同スペックの高倍率ズームがあるものの、古くて高価な上にサイズも倍くらいあるということで、あまり見かけません。
純正で使い勝手のいい高倍率ズームが用意されているところがニコンのアドバンテージといえます。
望遠側でニョキニョキ伸びるのはご愛嬌。
さて、そんな「AF-S NIKKOR 28-300mm f/3.5-5.6G ED VR」ですが、肝心の写りはどうなのか。今回、遠景を撮影してみました。
28mm
まず28mmワイド端。RAW未補正だと諸々かなりすごいことになっています。強い樽型の歪曲と周辺光量落ち。色収差もやばい。
撮って出しだと……
ニコンはボディ補正が可能なので改善されます。が、まだ残っていますね。
周辺光量落ちに関しては絞っていくとぐっと改善されていきます。
では気になる解像はどうか。
中央は……そんなによくもないけど、倍率を考えるとこんなもんでしょうか。
一方で隅の解像は……
これはちょっと厳しい。
補正された撮って出しの方で確認してみても、
歪曲と周辺光量は調整されますが、解像は無理。ゆるゆるです。
ここは高倍率ズームの宿命ということで割りきりましょう。
ただ、絞るとシャープさを増します。
F5.6だと、
中央もややシャープに、
隅はまだちょっとアレですが、
F8まで絞ると、
中央はもう変わらない。
隅は……お、ちょっとキリッとした。
ということで、このレンズ、28mmで撮る場合はなるべくなら開放を避け、F5.6~F8くらいで撮るとよさそうです。
F5.6だと中央が、F8まで絞ると隅も改善する印象です。
35mm
続いては35mm。
開放での周辺光量落ちは相変わらずですが、撮って出しだと補正されて改善されます。絞る場合はF11で完璧になります。
歪曲については28mmと違い、わずかな糸巻き型の収差。しかし、それほど目立ちません。
解像についてはどうか。
中央。
隅。
うーん、やっぱり隅が辛いですね。文字がズレて二重になっています。
F5.6だとまだ流れていて、F8くらいから許容範囲になります。
できれば絞りたいですね。
50mm
どんどんいきます。続いて50mm。
開放F4.5なのですが、ちょっと勘違いしてF5.6のデータしかありません……。
広角よりはだいぶマシですが、周辺光量落ちは出ます。それから糸巻き型収差もありますね(左のビルの直線を見るとわかりやすいです)。
周辺光量落ちはF8で解消されます。
続いて解像を見ていきます。
中央。
隅。
開放からいうとちょい絞り程度なのですが、中央は申し分ないシャープさです。
隅は……うーん。厳しいことは厳しいけど、28mmがひどすぎたのもあって、こんなもんかなと。難しいことを言わなければ十分に使えます。
F8まで絞ってみました。けっこうシャープになりますね。
F11でピークになります。
85mm
続いて85mm。
ここでも糸巻き型の歪み。一方、周辺光量落ちはさほど目立たなくなっています。F8で周辺光量落ちは気にならなくなります。
解像はどうでしょう。
中央。文句なし。
隅。うーん、微妙……。
これもF8、F11と絞るたびに改善します。
これがF11。看板の文字を見るとわかりやすいです。
200mm
このまま刻んでいくと終わらないので、一気に200mmまで焦点距離を伸ばします(100mmあたりは85mmとそんなに変わりません)。厳密にいうと210mmになってしまいましたが。
かなりわかりにくいですが、糸巻き型の収差が若干あります。それから周辺光量落ちも。F8でほぼ解消されます。
解像はどうでしょう。
中央。
隅。
目を皿のようにして見ましたが、中央は絞っても変わりません。すでにF5.6でピークです。
で、隅ですが、実はこちらも絞っても同じです。十分とはいえませんが、開放からそこそこ解像しており、安定しています。
この200mmはかなり使えます。
300mm
最後に望遠端となる300mm。
やはり糸巻き型の収差と周辺光量落ち。周辺光量はF8で一気に改善し、F11で完全に解消します。
解像をチェック。
中央。
隅。
派手に色収差が出ているのは補正できるからいいとして……解像、意外と悪くないですね。中央も隅もけっこうしっかりしています。これくらいの高倍率ズームとなると望遠端の描写はグダグダでも仕方ないのですが、悪くありません。
F8、F11と絞っていってみましたが、描写はあまり変わりませんでした。
逆光耐性
最後に逆行耐性。
目立つゴーストやフレアもなく、ナノクリスタルコートがないにも関わらず良好です。
まとめ
補正もぜんぶ切り、隅を拡大してアラ探しした結果、28mm広角端の開放はやや解像が甘いかなという印象。補正をオンにしても歪曲と周辺光量落ちは少し残ります。
小さく使うなら問題ないですが、画質を重視する撮影には向かないでしょう(当たり前ですが)。広角端を使う場合は、できればF8、またはF5.6まで絞りたいところ。
一方で望遠側の性能は非常に高く、カメラ側での補正をオンにすれば目立つアラはありません。描写が向上する様子もないので、被写界深度を求めるとき以外は絞る必要をそれほど感じませんでした。
また、今回は検証していませんが、普段使っていて手ぶれ補正の効果にはとても満足しています。手ぶれ補正による弊害もまったくなく、レンズの暗さを補ってあまりある恩恵があります。
よく24-120mm F4と比較されますが、描写自体はやはり24-120mmの方が上です。特に隅の描写ははっきり違うと感じます。
ただそれもここまで拡大して重箱の隅をつついての話なので、結局のところ、24mmがほしいか300mmがほしいかで決めてしまっていいと思います。むしろ70-300mmと競合する気がします。
鏡筒はプラですが造りは頑丈で、価格を考えると文句なし。AFはすごく速いわけではないですが十分な速度で、精度は高く純正の安心感があります。自重による伸びを防ぐためのロックも地味にうれしいところです。
Nikon 高倍率ズームレンズ AF-S NIKKOR 28-300mm f/3.5-5.6G ED VR フルサイズ対応
- 出版社/メーカー: ニコン
- 発売日: 2010/09/02
- メディア: Camera
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