Nikon 1よ、どこへ行く - 1インチコンデジ戦国時代でどう価値を示せるか
デジカメinfoにニコンの新コンデジシリーズ「Nikon DL」の情報がリークされました。
まだ確定ではないのですが、過去の例から見てほぼ間違いなく発表されるものと思われます。
スペックは下記の通り。
Nikon DL24-85
- センサー: 1インチ BSI CMOSセンサー
- レンズ: 24-85mm F1.8-2.8
- 大きさ: 105.4 x 61.5 x 50.0 mm
- 重さ: 350g
Nikon DL18-50
- センサー: 1インチ BSI CMOSセンサー
- レンズ: 18-50mm F1.8-2.8
- 大きさ: 105.5 x 62.5 x 56.6 mm
- 重さ: 350g
Nikon DL24-500
- センサー: 1インチ BSI CMOSセンサー
- レンズ: 24-500mm F2.8-5.6
- 大きさ: 122.5 x 89.9 x 139.4 mm
- 重さ: 830g
主流になりつつある1インチセンサーを搭載し、これまでにどのメーカーもコンデジでは出していない超広角から超望遠まで、焦点距離をあますところなく網羅した意欲的な3機種です。
しかし……ニコンが1インチコンデジを出したことで、ちょっと立ち位置が微妙になってきたミラーレスがあります。
「Nikon 1」
2011年にニコンが新マウントとして送り出した1インチセンサーのミラーレスです。
当時は1インチといえばかなり大きなセンサーだったのですが、2012年にソニーが1インチセンサーとズームレンズを搭載したコンパクトデジカメRX100を発売。コンデジのセンサーサイズのスタンダードが一気に1インチにまで引き上げられました。
その後、数年遅れでキヤノンも1インチセンサーコンデジをラインナップし、パナソニックはさらに大きなセンサーを積んだLX100を発売するなど、コンパクトズームデジカメのセンサーはどんどん大きくなってきています。デジカメにおいてセンサーサイズは画質に関係する何よりも重要な要素。同世代のセンサーで同じ1インチなら、基本的な画質はだいたい一緒と考えて差し支えありません。ミラーレスなんだからコンデジよりも大きなセンサーをということでスタートしたはずの(おそらく)Nikon 1ですが、RX100の登場により画質面ではコンデジと比較されることになってしまったのです。
さらにNikon 1シリーズが不利なのは、専用のレンズを積めるコンデジタイプに比べて、同じセンサーサイズでもレンズが暗くなりがちなところ。そして、ボディサイズでもアドバンテージを取れていないところです。
たとえばNikon 1の最新機種であるJ5と、RX100シリーズ最新のMark IVのボディサイズ比較すると、
Compare camera dimensions side by side
ほとんど同じ大きさなんですよね。で、レンズはニコンの方が分厚くて、暗いです(ニコンのキットレンズは3.5-5.6。RX100 Mark IVは1.8-2.8)。テレ端は若干ニコンが長いとはいえ、広角側はRX100 Mark IVの方が有利ですから、これはなかなか厳しい戦いです。レンズ交換式なので明るい単焦点や望遠レンズが使えるという強みはありますが、もっとも汎用的に使える標準レンジでスペックが見劣りするのはセールス的にかなり不利でしょう。
もちろんNikon 1がコンデジに勝る点は多々ありますが(AFとか連写とか)、一般層に訴えるにはちょっと弱いです。センサーサイズとボディサイズとレンズの明るさという、もっとも目立つポイントで優位に立てていないのはかなりきつい。これ、婚活市場で言ったら「職業・ルックス・年収」くらいデカい要素ですからね。サイズやレンズの明るさに関しては、そりゃ専用設計できるコンデジが有利に決まっているのですが、そんなことはユーザーにはどうでもいいことです。
ニコンは1インチに関してはミラーレスで推し進めてきたという事情もあり、これまで1インチセンサーコンデジについては静観してきたわけですが、ライバルのキヤノンがフルラインナップを整えてきたことで、いよいよ乗り出さないわけにはいかなくなってきたのでしょう。
1インチセンサーコンデジ市場に参入するなら、当然ソニーやキヤノンと戦える機種を投入しないといけません。しかし、それは自社のミラーレス「Nikon 1」とカニバってしまう危険性があります。
じゃあどうするか。
少センサーのミラーレスがコンデジに淘汰されず生き残る道については、過去にこんな記事を書きました。
1インチよりさらに小さいセンサーのミラーレス「ペンタックスQ」が今後生き残るためには、超広角などコンデジでは難しい写真が、レンズ交換によって撮れることをもっとアピールすべきではという内容です。
実際、ズームで超広角となるとかなりサイズが大きくなりズームレンジも短くなるため、汎用性を重視するコンデジでは採用が難しい面がありました。レンズ交換できる最大のメリットはそこだろうと思ったのです。
ところが今回、ニコンはその超広角ズームレンズを1インチセンサーコンデジの一機種に搭載すると見られています。スペックは35mm換算18-50mm F1.8-2.8ということで、これはまたしてもNikon 1の超広角レンズを上回るものです。
ソニーやキヤノンが手をつけていないズームレンジで攻めるのは後発として当然の姿勢だと思いますが、こんなの出してしまったらNikon 1がますます売りにくくなりませんか……。
Nikon 1はまだレンズがそろっているとは言い難いですし、ここしばらく新レンズも出てきていません。マウントアダプターで一眼レフ用のレンズが使えるとはいえ、それはあくまでもおまけです。ニコン自身も将来を測りかねているのかもしれません。
センサーサイズだけでは計れない魅力をどうアピールしていけるのか、ここ数年がNikon 1の正念場になりそうです。